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2017年6月15日木曜日

破るためにはまるのだ〜型のはなし


読んでいた本の中におもしろい話がありました。

今読んでいるのは落語家の立川談慶さんの執筆した『落語家直伝 うまい!授業の作り方』。

落語家と教師、一見共通点がなさそうですが、どちらにも”伝える”こと、”人について考える”ことが重要な職業です。

さらに落語家は話の達人ですから、手振りや目線の送り方など実践的な方法も教えてもらえるという…先生にも、いち落語ファンとしても楽しい読み物となっております。


さて、読んでいておもしろいと感じた部分。

それは「まずは真似る、個性はそれから」という一節でした。

自分の個性を確立することを目標にする前に、うまい先生の授業を一字一句違わぬ気概で真似てみるということですね。


我々ミュージシャン界隈でも同じような名言をリッチー・ブラックモアという人が言っています。

「天才でもない限り人の曲をコピーするしかないんだ。自分のオリジナリティを確立する一番の近道はこれだ。とにかく技を盗め」

この名言を初めて読んだ中学生のときは「人の真似なんて」とちょっと否定的に捉えていたような気がします。

だけども時間が経ち今になってこの言葉の意味がわかりました。


オリジナリティはコピーの中から生まれてくるのです。



ただ、真似をするだけでは足りなくて、すこし細くしたいことがあります。

まずはCDと違わないようにしっかりコピーして、しっかり弾いてみる。

ここまではOK。

そしてその先はこういうところにも着目してみます。

「なぜこのフレーズをこう弾いているのだろうか?」

「この音使い、よく出てくる!」

そう、お手本のミュージシャンがどのように考えて演奏しているのか、”コンセプトを考察”してみるのですね。


先ほどの授業に置き換えてもそう。

まずはしっかり真似て、それからコンセプトを考えてみる。

ここまでできれば、もうモノマネではなくひとつの芸に昇華したといっても過言ではないと思います。


そして本ではこういう一節も出てきます。

「刈り取っても刈り取っても出てくるもの、それが個性だ」

世の中、“個性”や”独創性”が重要視される傾向があるように感じます。

そういったものを育てようと努力することはすごく大事なことですが、先人の残してくれたメソッドを活用しないなんてもったいないことはありませんよね。

個性は刈り取ったって出てくるんです、沢山のお手本をコピーした暁には、モノマネではなく個性を確立できているのではないでしょうか。


なぜこの話に強く惹かれたのかというと、同じことを僕の師匠から聞いていたからなんですね。

やることは違えど落語と音楽、同じく芸を極める職業。

その中にも上達するために同じような筋道があり、修練があり…。

これって実はすべてのことにおいて共通するメソッドなのではないかと感じるのです。


そういえば”学ぶ”の語源は”真似る”なんですよ。

敬意を持って真似る、そして自分のものにしていく。

そういう姿勢を忘れないようにしたいなと思う名言でした。
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