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2018年1月8日月曜日

染みをめぐる考察


「今までで一番聴いたアルバムは?」
こういった質問をたまにもらうことがある。
今まで本当にたくさんの音楽を聴いてきたけれど、僕が覚えている限り、一番聴いたのはDavid SylvianのBlemishだ。

20歳を過ぎた頃、まるでそれが生活の一分であるかのように毎晩繰り返し聴いていた。
この作品は"コンセプト・アルバム"といわれる、一枚を通して共通のコンセプトやストーリーのあるアルバム。
そしてそのコンセプトはジャケットの彼の表情が表している通り、あまり幸せなものではない。

David Sylvianの離婚について、そして妻や子供たちとの関係といった事柄への
、極めて私的で内省的な心情への考察の記録である。
あんまりハッピーな内容ではないのだけれど、表現方法として用いられた実験音楽的なノイズはなんとも心落ち着く世界へ僕を連れて行ってくれた。
それからこのアルバムはBill Frisell、Derek Baileyや坂本龍一の元へ僕を連れて行ってくれることとなる。
そう、YMOも細野晴臣もBill Frisellも、すべてのきっかけはBlemishだった。

最近、あまり読んだことのなかったPaul Austerの小説をいくつか読んだのだけど、彼の作品の持つ静謐な雰囲気は、なんとなく僕にBlemishを思い出させた。
それと同時に、すべてのことが繋がったように思った。

David Sylvianや村上春樹や、ある時期の坂本龍一、ジャームッシュやクリムトに僕が感じるもの、その根底にあるものは共通の寂寥感を持つ癒しなのではないだろうか。
"暗い"ともまた違う、温度感の低さに惹かれているように思う。
そして僕自身もずっと胸のどこかに置き続けている、音楽をする上で外せない部分のひとつであるのだなと明確に意識した。



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